〇はじめに

ウィンドサーフィンのプロレースは、スピード、技術、そして自然との調和が織りなす究極のスポーツエンターテインメントです。
しかし、その舞台となる海岸および海上という環境は、ライブ配信にとって最も過酷な条件の一つでもあります。
海からの塩風、砂浜からの砂埃、予測不可能な天候変化、そして絶え間ない潮風——これらすべてが精密な配信機材にとって深刻な脅威となります。
私たちは長年にわたり、この究極の挑戦に取り組み続けてきました。

 

1.ウィンドサーフィンレース配信の過酷な現実

海洋環境特有の脅威

 

〇塩害の深刻な影響

海風に含まれる塩分は、金属部品の腐食を急速に進行させます。
レンズやセンサー、接続端子への塩の結晶化は、機材の致命的な故障を引き起こします。

 

〇砂浜からの砂埃

海岸での撮影では、風で巻き上げられた砂が機材内部に侵入し、可動部の摩耗やレンズの曇りを発生させます。
特にウィンドサーフィンレースでは、選手たちが砂浜から海へと移動する瞬間の撮影が重要ですが、
これが最も砂埃の影響を受けやすい場面でもあります。
 

〇海上の強風

ウィンドサーフィンに適した風速10-25ノットの環境では、機材の安定性確保が困難になります。
また、風切り音がオーディオ品質を大幅に低下させます。

 

〇突然の天候変化

海上では天候が急変することが多く、晴天から突然の豪雨へと変わることも珍しくありません。
高湿度環境では結露による機材トラブルも頻発します。

 

2.レース特有の配信課題

〇広範囲の撮影エリア

ウィンドサーフィンレースは数キロメートルにわたるコースで行われるため、複数のカメラポジションが必要となります。
それぞれの場所で環境対策を講じることは、従来のアプローチでは極めて困難でした。

 

〇ドローン中継による臨場感ある映像

海上の様子については、ドローンによる中継で臨場感のある映像配信を実現できています。上空からの俯瞰映像により、
レース全体の展開や選手同士の駆け引きを鮮明に捉えることが可能になりました。

 

3.従来の配信手法とその限界

陸上固定カメラの制約

撮影範囲の限定
塩害による頻繁な機材交換
天候変化への対応困難
簡易防水対策の問題点

操作性の著しい低下
放熱不良による機材オーバーヒート
完全な環境遮断の不可能
海上撮影の技術的困難

船舶の揺れによる映像品質の低下
海水飛沫による機材損傷リスク
安定した通信環境の確保困難
 

4.革命的ソリューション:ボクシー中継車システム

〇ウィンドサーフィン配信に特化した設計思想

私たちが到達した答えは、「移動する完全制御環境」の創造でした。ボクシーは単なる中継車ではなく、
海洋環境に完全対応した移動式放送局として設計されています。
と言うのは大げさな話で、2列目が180度回転する旧式のボクシーが、
配信に必要な機材を設置するのにシンデレラフィットしたからです。
きちんと中継車が装備できる予算や環境があれば今後は検討していく予定です。

 
〇まとめ

海という最も過酷な環境で行われるウィンドサーフィンプロレースの配信は、もはや技術的な制約ではありません。
ボクシー中継車システムにより、これまで「不可能」とされていた海洋環境での高品質ライブ配信が現実のものとなりました。
私たちは、スポーツの魅力を最大限に伝えることで、競技の発展と普及に貢献したいと考えています。
海風と塩害に立ち向かい、選手たちの勇姿を世界中に届ける——それが私たちの使命です。
ウィンドサーフィンが持つスピード感、技術性、そして自然との調和。
その全てを余すことなく配信する技術がここにあります。